オーダーメイド医療は生体医療にとって悪となる?

健康なことはありがたいこと。

技術の進化は医療の進化。
通り一辺倒の治療法ではなく、患者個人個人によりそった治療がこれからの医療です。
個人に寄り添うとは、ライフスタイルや体調だけでなく遺伝子レベルまで。
まさに、あなたのためだけに考えられたオーダーメイド医療が未来のあり方なのでしょう。

しかし、ここに未来の医療への期待に水をさす研究があります。
過去20年13万件もの臨床試験データをもとに全米経済研究所(NBER)が発表した論文は、オーダーメイド医療・カスタムメイド薬が一般化することで、生体医療の分野でのイノベーションがスピードダウンするというのです。
医療の進化が足かせになることってなんなのでしょう?

たとえば、Aさんが肺がんを患っているとします。
Aさんは、オーダーメイド医療によって、彼の体内でがん細胞を生んでいる特定の突然変異遺伝子だけを攻撃する薬を処方されています。
ただ、肺がん患者が全員、Aさんと同じ特定の遺伝子が原因ということはなく、個々それぞれのバイオマーカーが病の原因となっているはずです。
だからこそのオーダーメイド医療なわけですから。
しかし、逆に言えば、Aさんの治療法が他の人に効くかはわからないということであり、Aさんに使われた薬はごく少量でしか生産されないということになります。
薬局で売っている一般的な頭痛薬なんかと比べたら、そりゃもう小さな小さな生産バッチとなります。
結果、NBERが不安視するのは治療法開発=イノベーションへのインセンティブの減少です。
特定の個人に特化すればするほど、オーダーメイドとしての質はあがるものの、そのぶん治療コストも高くなるというのもNBERの懸念点の1つ。
同じ病気でも、バイオマーカーしだいで薬が違ってくるとなれば高くなるのは必至。
もちろん、オーダーメイド化が進むことで、より多くの人に効果的に効くという薬を割り出すことができるかもしれません。
ただ、それは同時に市場への独占権という心配もあるわけで。

米国では、前オバマ政権下で、医療のパーソナライズ化が注目されてきました。
人々の生活や環境、個人の遺伝子が病気の治療にどう関わってくるのかの長期的な研究にコミットしています。
が、今回のNBERの論文が、効果的な医療の弱点、欠点を提起した形になったのではないでしょうか。
よりよい治療は高額になる、業界全体の成長を脅かすとなれば、手放しでは喜んでいられません。
オーダーメイド医療が一般化するには、まだまだ課題が山積みなのです。

Image: Rob Brewer/Antibiotics/Flickr
Source: The National Bureau of Economic Research

Kate Conger – Gizmodo US[原文]
(そうこ)

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