目に見えないだけ iPhone XでAppleはすでに次の10年を作り始めている

iPhone Xについて語り倒した2時間。

ジャーナリスト・林信行さんをお迎えし、ギズモード・ジャパン編集長の鈴木康太と、ギズモード・ジャパンプロデューサーの尾田和実が登壇したトークイベント「Think iPhone」。

30年近くに渡り、テクノロジージャーナリストとしてApple(アップル)、Google(グーグル)、Microsoft(マイクロソフト)などのIT企業を取材してきた林さんは、Appleのこの先10年をどう考えているのか。

11月18日(土)に東京・渋谷で行なわれた、このイベントをダイジェストでレポートします。

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Photo: ギズモード・ジャパン
ジャーナリスト 林信行さん

iPhone Xは「みんなが一番使うあの機能」がすごい

鈴木:林さん、あらためてiPhone Xを触ってみていかがですか?

:ホームボタンが廃止されるという大きな変化がありましたが、みんなが一番使うiPhoneの機能であろうカメラがとても良くできていると感じました。
最初は「自撮りカメラが変わったくらいかな?」と思っていたのですが、バックカメラの望遠レンズが明るくなって、ポートレートモードが使いやすくなったのが大きいですね。
僕は前からiPhoneで写真を撮りまくっていましたけど、さらに撮るようになりました。
iPhone Xではあまりにも良い写真が撮れるので、壁紙に自分の写真を使うようになりました。

iPhone 8はこれまでのiPhoneの完成形。
iPhone Xが向かう方向は?

鈴木:ホームボタンがなくなったことによる操作性はいかがですか? これまでのiPhoneはタッチ操作が基本でしたが、スライドが基本になって操作感が変わってきたという指摘もあります。

:とても気持ちよく操作できるようになっていますね。
ロック解除する時もFace IDの認証を待たずにスワイプすることができるなど、よく考えて設計されていると感じます。

鈴木:iOS 11は明らかにiPhone X向けにデザインされている気がしますね。

:iOS 11になってから、iPadではドラッグ&ドロップができるようになってスワイプする機会が増えましたよね。
そういう点からも、iPhone 8はこれまでのiPhoneの完成系で、それに対してiPhone XからはiPadに近づいて行くような新しい流れを感じます。

鈴木:iPadはこれまで片手操作でしたが、ドラッグ&ドロップは両手を使って操作するのが特徴です。
両手を使うことや、操作方法が画面に明示されないスワイプが増えてきたという変化には、ユーザーのリテラシーが高くなったからできるようになったとも言われていますね。

:Macも昔はマウスのカーソルを合わせてクリックする操作だけで、最初はダブルクリックもありませんでした。
その後ドラッグが追加されるなど、操作方法が変わってきたという歴史もあります。
iOSも10年経って操作が変わってきたのかなと思います。

もともと人間の動きを考えてみると、机の上に資料を並べてスワイプするように見たり並べ替えたりしますよね。
机の上に置いてある本や資料をタップすることは現実にはありません。
そういう点からも、iOSの操作はより直感的になってきていると感じます。
そして画面が大型化したからこそ可能になった操作という気もしています。

ホームボタン廃止は、スマートフォン初心者を困惑させる?

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Photo: ギズモード・ジャパン
ギズモード・ジャパンプロデューサー 尾田和実

:でも、ホームボタンをなくしたことで心配なのは、まだまだ多いスマートフォンに移行していないユーザーですね。
初心者ユーザーにとっては、ホームボタンというのは「一番安心できるボタン」でした。
どんなに訳の分からない画面に行ってしまっても、押せば見慣れたホームに戻れるボタンだったからです。

尾田:まさにうちの3歳の息子が戸惑っていました。
YouTubeを観るのがお気に入りで、ホームボタンを押してアプリを切り替えていたのに、iPhone Xでは元に戻ることができないんです。

iPhone本来の姿はガラス筐体?

鈴木:そしてiPhone XとiPhone 8では、4S以来のガラス筐体に戻りました。
こうした外見上のデザインにはどのような思いが託されていると感じますか?

:もともとiPhoneのデザインには、ジョブズによる「何にでもなる美しいガラス」というビジョンがありました。
そういう点からもiPhone 4シリーズのガラス筐体が理想だったのでしょうが、耐久性の問題や製造の難しさも含めてiPhone 5からアルミ筐体になりました。
それが技術の進歩により戻ってきたのではないでしょうか? 無線充電のためという部分もありますが、もともとやりたかったデザインはこっちの方向だったんだと思います。

尾田:僕はiPhone Xはサイドがステンレスで丸みを帯びている点など、Apple Watchに似ていると思いましたね。
Apple Watchの裏にはマーク・ニューソンというデザイナーの存在があり、今回のiPhone Xにも大きな影響を与えているのではないかと感じるのですがいかがでしょうか?

:Appleのデザインチームは、みんなでよく話し合ってチームワークでデザインを進めるのが特徴ですので、特定の個人の影響というものは特に無いと思います。
Apple製品にはストイックなデザインというイメージがありますが、もともとジョナサン・アイブのデザインって初代iMacに代表されるようにポップな方向性なんですよね。
iPhone 5Cもマーク・ニューソン的とよく言われていますが、ジョナサン・アイブの本来の路線はああいうポップな方向なんだと思います。

Face IDはiPhoneよりもMac向き?

尾田:Face IDの採用によって、通知の中身を他の人が見られなくなったのは気持ちいいですね。
僕は今回一番革新的な機能はFace IDだと思っていて、今後iPhoneを離れて他のものにも応用されていくんじゃないかと思っています。
それこそAppleが取り組んでいる自動運転技術などにも応用されて行くのではないでしょうか。

:Face IDはMacが一番恩恵を受けそうな気がしますね。
今のコンピューターは誰が操作しても同じように動きますが、Face IDによって個人を認証することで真にパーソナルなものとしてのパーソナルコンピューターが実現する気がします。

Video: Hirofumi Suzuki / YouTube

:ただ正直、iPhoneにはTouch IDとFace ID両方あったほうがいいと思います。
テーブルの上にiPhoneを置きっぱなしにしてツイッターを見たいという時など、iPhoneをいちいち覗き込まないといけないのは面倒ですし(笑)。

Appleはすでに次の10年を作り始めている

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Photo: ギズモード・ジャパン
ギズモード・ジャパン編集長 鈴木康太

鈴木:AppleはiPhone Xがスマートフォンの次の10年を作ると銘打っています。
しかし、これに対して「これが今後の10年でいいの?」という声も聞かれます。
僕自身も「スマートフォンで止まっていいのだろうか。
次の10年もスマートフォンに熱中する生活が続くの?」と疑問に感じました。

:Appleの未来の作り方って「やりすぎない」ことなんです。
iPhoneの新機能って、Apple以上にアプリ開発者やユーザーが作っている部分が実は多い。
「これが良いでしょ」と製品を提供するプロダクトアウトの会社というイメージが強いですが、Appleは実は誰よりもユーザーの声に耳を傾けています。

Appleがここまで成長できたのは、そうした新機能を盛り込める力強い「原型」を作れたところにあると思います。
10年前に初代iPhoneをジョブズが発表した時も、スマートフォンからキーボードを取り払うことで自由度を広げました。
そして基本的には、要素を減らせば減らすほど、そこに対する想像力が広がっていきます。
iPhoneはただのガラス板だからこそ、みんなが「自分のためのもの」だと思えるんですよね。
男性用でもあり、女性用でもあり、子供も、年配の方も触れる。
その上でいろんなアプリが出てくる。
だから、今後Appleがすべきことは、ありとあらゆる人にとって良い原型であるために、カメラや画面の性能などを常にブラッシュアップし続けることではないでしょうか。
いろんな人たちが「今回のiPhoneには目新しい新機能がない」など、毎年好き放題言っていますが、それが実際には売れていることからも、ガジェット好きは別としてほとんどの人たちは機能で製品を買っていないのだと思います。

今、AIやマシンラーニングなどが大きな話題となっていますが、その大半はビッグデータの活用で、サーバー側で処理しているものです。
それに対してAppleは「エッジ」で処理している。
彼らは個人のプライバシーを尊重するあまり、ネットに情報をアップロードすることなく、端末の中だけで人工知能的な処理をしているんです。
これは水面下で行なわれているため目立ちませんが、確実に次の10年を作っていると思います。

鈴木:最後に、10年後にもスマートフォンは存在していると思いますか?

スマートフォンはなくならないと思います。
あちこちにマイクがあって、それに話して操作する未来もあるかもしれませんが、やはりスマートフォンには手に持てるものとしての安心感がある。
iPhoneは万能リモコンとして、声とタッチ操作両方で付き合う21世紀のインターフェースとして残り続けると思います。

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