ある日突然歩くことも話すことも困難になるが怠けと誤解されやすい慢性疲労症候群のドキュメンタリーUnrest

ある日突然歩くことも話すことも困難になるが「怠け」と誤解されやすい「慢性疲労症候群」のドキュメンタリー「Unrest」


長期にわたる疲労感と共に微熱・筋力低下・思考力の低下・睡眠障害といった症状を呈する「慢性疲労症候群」は慢性疲労と名前が似ているため軽視されがちですが、実際には歩くことも話すことも困難になる重篤な病です。
「私は死んでしまったのに、世界が動き続けるのを見つづけなければならないように感じていた」と語るJennifer Breaさんも患者の1人ですが、「慢性疲労症候群を人々に理解してもらうには、視覚的なイメージが必要である」と気づいたことからドキュメンタリー「Unrest」を制作しており、その予告編を見るだけでも、この疾患がどれほど人の人生を破壊するのかが分かります。

Unrest_Trailer on Vimeo


「子どもの頃から、私は世界を丸ごと飲み込んでみたいと感じていたし、何でも可能になると思ってきました」と語るJennifer Breaさんはハーバード大学で博士号を取得し、その後プリンストン大学で政治学を学んでいた女性。


結婚し……


笑顔の絶えない女性でした。


「私には、もっと時間が残されていると思っていました」


画面が切り替わり、「私が何をしたのか分からないけれど、カウチから起き上がれる気がしない」とBreaさん。


階段をゆっくりと這い……


吐き気に耐えるようにカメラを動かします。


時には話すことさえ困難になるとのこと。


しかし、医師に自分の状態を伝えても「ただの脱水症状」と伝えられます。
慢性疲労症候群は症例が少ないこともあって医師による診断が難しく、「症状を軽く言い過ぎると『助けることはできない』と言われ、重く言い過ぎると『精神障害』と診断される」とのこと。


Breaさんが慢性疲労症候群となったのは、ある日突然の高熱に襲われたことをきっかけとしています。
それ以来、Breaさんは寝たきりの生活になってしまったとのこと。
慢性疲労症候群の症状の1つに筋力の低下が挙げられます。


インターネットを検索すると、Breaさん以外にも慢性疲労症候群の症状を訴える人は何千人といました。


慢性疲労症候群の患者は6~7割が女性と言われており、過去にも同様の症状を訴える人は存在しましたが、近年になるまで、「ポリオのような病」「疲れウイルス」「ヒステリー」など、別の病気と勘違いされてきました。


「疲れて仕事に行きたくないよ」と語るコメディアン。
誤解され、軽視されることが多かった疾患ですが……


一方では泣き叫び車いすから崩れ落ちるBreaさんの映像が流されます。


「これも過去になるよ」と話しかける夫に対して「わかった」と返すBreaさん。


「慢性疲労症候群だって?僕も今日疲れているんだよ!」とテレビ番組のコメンテーターの笑い声が響きます。


スタンフォード大学大阪市立大学の研究から生活環境ストレスや炎症を引き起こすタンパク質が関係しているのではないかと考えられてきていますが、この病気の原因は2017年現在において特定されておらず、効果的な治療は存在しません。


しかし、Breaさんは実験的な治療を続けている様子で、夫である男性は「高校科学のいかれた実験道具みたいだ」と何かの器具を触っています。


栄養ドリンクのようなものを飲むBreaさんの姿。


キャンピングカーで移動し……


旅行に出られるまで回復した姿も映されました。


映画作りを始めることを決意すると、世界中の患者たちと交流するようになります。


そして、Breaさんは、慢性疲労症候群のために生活機能を失った人々のコミュニティ「missing」と出会います。


missingのイベントにはさまざまな写真が貼られ……


地面に並べられた靴には「ダンスの喜びを失った」など、自分の失ったものについて書かれています。


ずらりと並べられた靴。
これだけの靴が、慢性疲労症候群によって「失われた」ものを象徴しているわけです。


自分の状態を「私は死んでしまったのに、世界が動き続けるのを見つづけなければならないように感じていました」と語っていたBreaさんですが、「人生は過ぎ去ってしまった。
しかし、私は新しい人生を手に入れた」という言葉で予告編は締めくくられています。


BreaさんはクラウドファンディングプラットフォームのKickstarterで16万1654ドル(約1800万円)を集めることで映画制作を行い、Unrestをサンダンス映画祭に出品しています。
The Vergeの取材によると、もともとBreaさんがムービーを撮り始めたのは映画作りのためではなく、「ムービーで撮影した自分の状態を見せて初めて医師がまともに取り合ってくれるようになった」という経験からでした。
Breaさんによると、「ベッドから落ち頭をぶつけてしまったにも関わらず何時間も動けないままだった」と言葉で説明しても注意を払わなかった医師が、泣きながら床を這うBreaさんを映したムービーを見ると、がらりと声のトーンを変えたとのこと。
この経験から、「慢性疲労症候群を理解してもらうには視覚的なイメージを見せる必要があるのだ」と気づき、Breaさんは出資を募り映画作りをスタートさせたそうです。

予告編は希望が見える終わり方となっていますが、エンディングは非常に難しかったとBreaさんは語ります。
映画は通常、徐々に盛り上がりを見せてから終わりへと収束するという弧の形を描きますが、現実の病は収束することがなく、良くなったり悪化したりが円のように繰り返されます。
「慢性疲労症候群の物語は必然的に円を描くのだ」ということ、よく見える時は快方に向かっている時ではなく、「一時的によくなっているのだ」ということをBreaさんは語っています。

なお、Unrestはアメリカで2017年9月22日から公開されており、日本での公開については記事作成時点で未定です。

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