今なお内戦の続くアフリカコンゴと説明されたサプール写真展の謎

「今なお内戦の続くアフリカコンゴ」と説明されたサプール写真展の謎


アフリカには「コンゴ」という名前の国が、(1997年までザイール)の2つあります。
両国ともに、今なお内戦の続く国なのでしょうか。
私は大げさな気がします。
当時の政権が倒れかねないほどの大きな内戦は終結しました。
両コンゴとも現時点で国家が正常に機能していないシリアやイエメンのような内戦中の国ではありません。

こんにちは、です。
コンゴ共和国は自転車で走りました。
コンゴ民主共和国はビザが下りずに未訪問。
もし誰かに「コンゴは旅した?」と聞かれたら、そのような説明をします。
だって、2つのコンゴは別の国ですもの。

◆サプール
最近、日本でコンゴ共和国やコンゴ民主共和国(以下、コンゴ民主)でみられるというというファッションが度々話題となります。
私も何度かネットで記事を読みました。
サップとは「Societe des ambianceurs et des personnes elegantes」というフランス語の頭文字を取った言葉。
日本語だと「おしゃれで優雅な紳士協会」でしょうか。
このサップに興じる人たちを「サプール(Sapeur)」と呼びます。


貧しい暮らしでありながらも、サプールは派手なスーツで身を固めファッションスターのように街中を闊歩します。
スポットライトではなく、赤道直下の強い日差し。
ランウェイではなく足元にゴミが散らばる路地裏。
写真を見ていると、貧しい環境と豊かな服装のギャップに引き込まれてしまいます。
くすんだ街の中、サプールの鮮やかなスーツの色は強く存在感を放っていました。
彼らは身だしなみだけでなく、内面にも気を使います。
スーツの似合う紳士となるには、日々の言葉遣いや振る舞いも大切なようでした。

サプールの活動には「平和だからオシャレを楽しむことができる」という内戦に苦しんだ場所ならではの意義があります。

関連して、以下のような書籍が出ています。



◆サプール写真展


そうしたサプールを取り上げた写真展が、2017年9月から全国の大丸・松坂屋で行われています。

・サプール写真展 SAPEURが大丸・松坂屋にやってきた!メンズファッションウィークス!

この写真展のオフィシャルページには次の紹介文があります。

今なお内戦の続くアフリカコンゴで、90年以上続く独自文化“サプール”。
世界最貧国の1つと言われる暮らしの中、1ヶ月の収入をはるかに上回る高額なブランドスーツを身にまとい、街を練り歩く男たちがファッションを通して平和のメッセージを発信しています。
そんな「服が汚れるから戦わない」というシンプルな哲学を持った彼らを撮り続ける写真家 SAP CHANOの200点以上の写真をムービー映像と共に展示。
大丸創業300周年企画の一環として、全国の大丸・松坂屋4店舗を巡回する展覧会です。

この紹介文の「今なお内戦の続くアフリカコンゴ」という部分を私は理解できずにいます。

◆2つのコンゴ


冒頭でも指摘しましたが、コンゴにはコンゴ共和国、コンゴ民主(旧ザイール)と2つの国があります。
世界一周中にマラリアに倒れたコンゴ共和国のことは、私もいただきました。
私は記事中に、次のように2つのコンゴを説明しています。

コンゴのBrazzavilleから、コンゴ民主のKinshasaへ進む予定でした。
この二つのコンゴは別々の国です。
Kinshasaのあるコンゴ民主は旧ザイールといったら分かりやすいでしょう。
旧ザイールは面積約234万平方キロメートル、人口約6300万人とアフリカ中央に位置する大きな国です(コンゴは面積約34.2万平方キロメートル、人口約370万人)。
この紛らわしい二つのコンゴのを区別するため、コンゴブラザビル、コンゴキンシャサと首都名を後に付けたり、英語ならBrazzavilleをCongo、kinshasaをDemocratic Republic Congoを略してDRCと呼んでいます。
日本だとコンゴ共和国と、コンゴ民主共和国になるでしょうか。
今回はBrazzavilleをコンゴ、Kinshasaをコンゴ民主と呼ばせてもらいます。

更に説明を加えるなら、フランス植民地だったのがコンゴ共和国、ベルギー植民地だったのがコンゴ民主です。
独立後は両コンゴともフランス語が公用語になっています。
ベルギーも公用語の一つがフランス語です。

今回の写真展で飾られるサプールの写真は、写真家のSAP CHANO氏の作品。
CHANO氏はブラザビルおよびキンシャサと両コンゴにてサプールの活動を追いかけておられます。
だから、今回の写真展も両国のコンゴのサプールの写真が見られるのでしょうか。

◆内戦の続く


コンゴ共和国を旅した同じ記事に、私はこのような事も書きました。

世界一周を計画していたころのコンゴは、内戦をしていて、旅することができない国でした。
でも、平和になった国をチャリダーは颯爽と駆け抜けていきます。
東ティモール、コソボ、シエラレオネに続いてコンゴも走ることができて良かったです。
今は走れないイラクやアフガニスタンなんかも、いつしか走れるようになるでしょう。
世界中を自転車で走れるようになることがチャリダーとしての願いかもしれません。


2011年当時も、コンゴ共和国ではの活動がありました。
道程でも政府軍による検問が度々ありました。
それでも私は内戦は終わっていたと認識しています。
コンゴ民主もビザが取得できていれば訪問していました。
もちろん内戦が終わっているからです。

ただ、これには内戦という言葉の定義にも関わってきます。
私が内戦と聞いてイメージするのは「スペイン内戦」「カンボジア内戦」「スーダン内戦」といった国を二分するほどの大きな内乱。
ですが、内戦という言葉を辞書で引くと「国内における、同じ国民どうしの戦い」とあって規模の大小は問いません。

それを踏まえて、コンゴと呼ばれる2つの国の現状を確認すると……

・コンゴ共和国


コンゴ共和国では、昨年の大統領選挙の結果に不満を持った武装勢力と治安当局による衝突が起きています。
この武装勢力はコンゴ共和国で起きた2度の内戦の当事者でもあったニンジャというグループの残党です。

海外安全ホームページ: 危険・スポット・広域情報 コンゴ共和国

・コンゴ民主


コンゴ民主では、独立後にはコンゴ動乱、冷戦終結後に第一次コンゴ内戦、第二次コンゴ内戦と、これまでに国家存続を揺るがす大きな内戦が3回も起きています。
第二次コンゴ戦争にいたっては、多数の周辺国を巻き込んでアフリカ大戦争と称される大きな混乱でした。
この第二次コンゴ内戦も、2002年に関係勢力によるが結ばれています。
それゆえに、私はコンゴ民主の内戦は終結したという認識でした。
しかし、第二次コンゴ戦争以降も政情は不安定で、国内各地で武力衝突は繰り返されています。
民族問題があります。
そして資源国でもあります。
2011年にはという武装勢力によって東部の都市ゴマが一時占領されました。

海外安全ホームページ: 危険情報詳細 コンゴ民主共和国の危険情報

このような局地的な武力衝突を内戦と表現することは間違いとは言い切れません。
しかし、日本では一般的な表現ではない気がします。
ボコ・ハラムが活動するナイジェリア、神の抵抗軍(LRA)が活動するウガンダ、同じアジアでもイスラム分離独立運動を抱えるフィリピンも、「今なお内戦の続く」という国々でしょうか。

また「続く」という言葉もはっきりしません。
古い内戦が今なお「継続」しているのか、それとも不幸が続くというような「起きる」という意味か判断がつきません。

◆もっと説明を
写真展の文面だって、限られたスペースで言葉を絞る必要があったかもしれません。
文章を書いた上で本来の意図が上手く伝わらないことだって大いにあります。
しかし、今回の文面だと、ステレオタイプのかわいそうなアフリカを使ってイベントを盛り上げているようにも見えてしまいます。

日本からアフリカは遠すぎます。
だから、知らないことも多すぎます。
「今なお内戦の続くアフリカコンゴ」というフレーズ。
内戦は何を意味しているのか。
コンゴもコンゴ共和国なのか、コンゴ民主共和国なのか。
もっと説明があってもいいと、私は思っています。

(文・写真:周藤卓也@チャリダーマン
自転車世界一周取材中
Twitter
Facebookページ
DMM講演依頼 )

チャリダーマンはを一冊の本にするという夢があります。
興味を持っていただける出版社、編集者の方いましたら、ご連絡いただけると幸いです。

こちらからコメントの記入が行えます

*

ピックアップ記事